交わした約束 20年後の再会

想像力とは創造力である。全ての事柄は内発的動機から始まる。生前、父がしつこく言っていた言葉。この岩魚荘も父の代で3代目、築150年を越す古民家は、昔の腕利きの大工さんが建てただけあり、古さを感じさせない頑丈さと、昔の建築物ならではの、味わい深さを醸し出していた。ワクワクしながらルアーを作る早苗さんの姿が、いかに物作りが楽しいか、僕ら現代人に心の豊かさをもたらすかを教えてくれた気がした。しがらみや常識、レールに敷かれた人生は安定という名の不安定を作り出し、人との比較を生み、トゲトゲした荊棘を心に作り出した。権力に媚びる事を心底嫌い、自分の美学をひたすらに追求し続けた父。変わり者と嫌っていたが父は本当に豊かな生き方を僕に教えようとしていた。ここでの生活は、都会のサラリーマン生活の時間に比べると、ほんの一夏の短い時間だが、遥かに濃密で充実した時間だった事に気がついた。右向け右、左向け左の人生が幸せと信じて生きてきたが、やはり僕も父さんの子供。いかに心豊かに生きられるか。それが僕の人生のテーマになっていた。「準備は出来たね。じゃあ、伝説を釣り上げよう」「はい!」まだ陽が昇る前、深夜3時から釣りの支度をして、山に向かった。

 

                    続