マイレコードフィッシュ 48岩魚との出会い。

 まさか、こんな所に居るとは。大物は案外そんな所にいる。僕が通う川には、水力発電の取水ダムがある。そのダムより下は、放流がされておらず、釣れない。また、この川は昔の災害により、魚が少なくなった。そんな話を地元の先輩方からは、よく聞いていた。僕自身もそんなものかと、変に納得し、余り、下流域の探索には乗り出さなかった。本当にそうだろうか?疑い始めたのは、恥ずかしくも、この釣りを始めて、4年目の春のことであった。

 愛読している釣り雑誌、Gijieにて、魚野川の雪代岩魚の特集が組まれていた。下流域でこんなに、大きな魚が釣れるのか!その事実に、驚愕したのを覚えている。僕が通っている川にも、いないだろうか?雪も降るし、条件的にも良く似ている場所があるな。解禁は、そこで迎えよう。幼少期より、よく橋から眺めていた、思い入れのある、場所でもあった。

 3月の川はまだまだ寒く、日本海より吹く北風は、肌を突き刺すような、冷たさがあった。初めて降りる下流域。お気に入りの5cmミノーを結び、対岸を目掛けて、フルキャスト。時折、アクションをかけながら、大きくスイングさせる。すると、いきなり40cmくらいの岩魚がヒットした。いるじゃないか!本来ならここで、満足し、納竿する所だったが、その日は欲張って、まだ狙ってみることに。淵のカケアガリ、少し、浅くなっている所をトレースしてくると、ドスンっ!今まで、感じた事がないくらいの、重さが竿に伝わった。少々、焦ったものの、フッキングが決まれば、釣り人に軍配が上がる。4ポンドラインも、功を奏して、余り、暴れずに、ランディングした。

 初めて見る本流岩魚。鬼のような形相の顔は、魚というより、獣を彷彿とさせた。そして、長さもさることながら、太さ、重さに驚いた。何枚か写真を撮り、畏敬の念を込めて、丁寧にリリースした。ありがとう!雪代岩魚の存在が証明された瞬間だった。

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