美しき本流岩魚との出会い。

 初夏、爽やかな空気を感じながら、もくもくと大きくなる入道雲に向かい、車を走らせる。今日はどこが良いだろうか?とある中流域のポイントがふと頭に思い浮かぶ。良し!あそこだな!第六感。この釣りをしていると時に冴え渡り、そしてあながち間違っていない馬鹿に出来ない感覚だ。河原に車を止めると、いつもの様にタックルをセットする。ラインをガイドに通す瞬間。ひとつひとつ通す毎に、ワクワクの気持ちが増していくのを感じる。最近変えたラインシステム、PEラインとフロロカーボンのリーダー。MLのタックルも相まって、大物どんと来い!な仕様に、1人にやにやする。ベストを着て、ウェーダーも履いて準備万端。河原から少し歩き、夏を感じて伸びてきた薮を掻き分け、フィールドに立つ。川の独特の匂いがする。スイカの様なキュウリのような少し青臭い匂い。この匂いも魚の活性の指標の様な気がしている。この匂いが強いと決まって大物が出る。そんな独り言を呟きながら、良さげなポイントにルアーを打ち込んでいった。瀬の中を泳がせると虹鱒と岩魚が釣れた。活性は案の定高い。やや渇水気味なのも味方して、普段は流れが厚く、探りきれないポイントも満足にルアーを流せる。鱒達の元気な姿に嬉しさを感じながら、気がつくと中規模堰堤の落ち込みにたどり着いていた。50sだとアピールに欠けると思い、今シーズン中々の釣果が出ている70sにチェンジする。出るなら白泡の中からだな。無駄のない洗練されたキャストから放たれたルアーは吸い込まれる様に滝壺に入っていった。1回、2回、3回。やや間隔の空いた、レンジを下げたトゥイッチングをする。すると、白泡の切れ目から、ドスッ!大物特有の抱え込む様なバイトがルアーを水中にひったくっていった。良し!すかさずアワセを決めると、その鱒は滝壺の住処に何度も戻ろうとした。しかしながらフッキングが決まれば後はこっちのもの。走る鱒をいなしながら、ネットに誘導し、無事キャッチ!そこに横たわったのは驚くほど綺麗に模様が出た雄の岩魚だった。この釣りは本当に何があるか分からない。8年目を迎えても未だに驚く様な個体との出会いがある。河原に即席の生簀を作り、30枚ほど写真を撮らせてもらった。ありがとう。リリースするとその鱒は悠々と滝壺に帰っていったのだった。河原には釣れた嬉しさと、別れの寂しさが漂っていた。